仙台高等裁判所 昭和26年(う)1109号 判決
差押当時物件が存在し之を差押さえたものであることが認められる以上、その後当該差押物件の滅失その他の事由により公判廷で之が取調をしなかつた場合その差押調書のみを証拠となし得ること勿論である。本件において、仮に所論の如く、前記差押目録記載の物件と原審押収の物件とが同一物でなく、原審は差押物件の証拠調をしていないものであるとしても、原判決は右差押目録のほか証人菊田繁に対する原審尋問調書、原審第四回公判調書中証人高橋清の各供述記載及び大蔵事務官の被告人に対する質問顛末書の供述記載をも併わせ挙示しているのであつて、それによれば昭和二十五年十一月十四日右差押目録記載中1乃至8の物件が被告人方屋内で発見されて差押さえられ、被告人は当時その差押物件が自分のものであると供述していることが明かであり、記録を精査しても右認定に誤があることが認められないから、当該差押物件が公判廷で証拠調されたと否とに拘らず、右差押目録を証拠とすることは毫も違法ではない。
(中略)
原判示事実中所論の密造焼酎であることの知情の点は、原判決挙示の大蔵事務官の被告人に対する質問顛末書中の供述記載によれば、被告人がこの点を自供しているのみでなく、本件焼酎は被告人が名も知らない男から買求めたもので、アルコール度数は四十度といわれ、その値段はいずれも一升二百五十円という安価であることが明かであり、原審第四回公判調書中証人高橋清の供述記載によれば、本件焼酎は焦げくさい臭気がし、色も密造のものであることが認められ、これらの事実からみても被告人が密造酒であることを知つていた事実が肯認され、記録を精査しても原判決の事実認定に誤があることは認められない。論旨は理由がない。
(後略)